横浜地方裁判所 昭和40年(行ウ)6号 判決 1967年10月19日
原告 佐藤貞栄
被告 川崎市建築主事
主文
原告の被告に対する建築確認事項変更処分無効確認の訴えを却下する。
原告のその余の請求はいずれもこれを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
当事者双方が求める裁判並びにその主張及び証拠の提出、援用、認否は別紙記載のとおりである。
理由
一、まず本案前の申立について判断する。
行政事件訴訟法が行政処分の無効確認を求める訴えなどの抗告訴訟を定めているのは、公権力の主体たる国又は公共団体がその行為によつて国民の権利義務を形成し、或はその範囲を確定することが法律上認められている場合に具体的な行為によつて権利を侵害された者にその違法を主張させその効力を失わしめてこれを救済するためである。
従つて抗告訴訟の対象となる行政庁の処分は国民の権利義務に消長を来すような何らかの法律上の効果を生ずる行政庁の行為でなければならない。
(一) そこで検査済証交付行為の性質について考えてみるに、この行為は建築基準法第七条に規定されるとおり、建築主事が建築主の工事完了の日から四日以内に到達の文書による届出に基き届出に係る建築物及びその敷地が建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基く命令及び条例の規定に適合しているかどうかを検査し、適合していると認められるときになすものであり、建築物の建築主はこの検査済証の交付を得て初めて当該建物を使用し又は使用させることが許されるものであつて、行政処分が多数の行為の手続的発展を経て完成される場合の単に手続的意味ないし効果を有するにすぎない行為とはいえず法律上交付行為によつて建築物使用の法的効果が認められるものである。
従つて検査済証交付行為は抗告訴訟の対象となる行政処分といわざるを得ない。
(二) つぎに原告が主張するところの建築確認事項変更処分の無効確認の訴えについて検討するに、原告は被告が訴外人から本件建築物の間取構造の模様替に伴う設計変更に関する建築物確認事項変更報告書を受理し、確認事項の変更の処分をなしたと主張するのであるが、いずれも成立に争いのない甲第一号証の六、九、一一、一三に被告本人尋問の結果を併せると、本件建築物の確認処分後、間取りの設計変更があつてその変更報告書がすでに提出された確認申請と一体をなすものとして提出され、被告はこれを受理したが、設計変更が間取りの設計変更に止まり当該建築物の主要構造部分の過半以上の模様替即ち構造上主要な壁、床の一種以上についての大規模の模様替でなかつたので確認事件の一部として処理し、新らたな処分行為はしていないことが認められる。そうだとすると原告の権利義務に消長を来す行政庁の行為は存在せず、また当該報告書の受理をもつて行政処分と解することもできない。
(三) さらに進んで原告の訴えの利益について考察すると行政事件訴訟法は第三六条で無効確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者が訴えを提起することができると規定するが、右の法律上の利益とは単に具体的な権利のみならず法的に保護された利益ないし法的保護に値する利益と解され、右の利益を行政庁の行為により侵害された者は、その行為の相手方たると第三者たるとを問わず当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限りその無効確認を求めることができるわけである。
ところで建築基準法第六条第一項各号に該当する建築物を建てる場合には同条により当該工事の計画が当該建築物の敷地構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基く命令及び条例の規定に適合するものであることを要し、同法第三章第一九条以下、建築基準法施行令第一九条以下にその具体的な基準、同法施行規則並びに建築士法にはその手続の細則並びに添付されるべき図書の作成に関する細則がそれぞれ規定されている。右規定はいずれも法第一条の「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的」として単に建築主のみでなく近隣居住者の保健衛生、火災予防等の見地から規定されている。
従つて、法第六条による建築確認処分の対象となつた建築物の近隣居住者は法規違反の確認処分これに続いてなされた検査済証交付処分によつて保健衛生上不断の悪影響を受け、或は火災等の危険に曝されるおそれがあるときは、法律上当該確認処分、検査済証交付処分の無効確認を訴求する法律上の利益を有し当事者適格を有すると解すべきである。
本件についてこれをみるに、本件建築物敷地に隣接して原告所有地がありこの土地上に原告は家屋を所有し原告ら家族が居住していることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証の六、一一、第二号証によれば本件確認等処分に係る建物は総面積二四二・九三平方メートルの木造二階建簡易宿泊所であることが認められ、これによれば右確認申請に基く右建築の施行完成後においては原告の所有し居住する家屋から近接した場所に木造二階建簡易宿泊所を控えることとなつて日常の保健衛生上不断の悪影響を受け、ないしは火災等の不測の危難に曝されるおそれなしとは断言し得ないものと認められる。そしてこの危難の排除はその性質上、建築物の所有者、処分行為者たる建築主事及びその属する川崎市に対する損害賠償請求ないしは所有者に対する妨害排除請求によつてはその目的を達し得ず他に当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えを提起できる法律上の救済方法はないといわなければならない。
従つて原告の本件建築物敷地の近隣居住者として建築基準法第六条第一項、第五項、同法施行令第一一四条第二項、第一二〇条、同法施行規則第一条、建築士法第二〇条第一項の違反を理由に本件確認等の行政処分の無効確認を求める各請求は建築確認事項変更処分の無効確認の訴えについては不適法として却下を免れないがその余の訴については適法といわねばならない。
二、そこで本案につき判断する。
(一) 訴外国一摩は川崎市貝塚三九番地の二の土地上に木造二階建二四二・九三平方メートルの簡易宿泊所(本件建築物)を建築するため昭和三一年七月二三日被告に対し建築確認申請をなしたところ、被告は同年八月一一日付川建第三五一一号をもつて右建築を確認する行政処分をなしたこと、訴外人は本件建築物を昭和三一年一一月二五日建築し、昭和三二年一月二五日ごろ被告に対し右建築工事完了届を提出し、被告はこれを同年二月一四日受付、同年三月一日付をもつて同月五日訴外人に対し本件建築物の検査済証を交付したこと、本件建築確認申請添付の設計図書のうち二階平面図の部分に記載事項の一部を訂正した一箇所に訂正印のないこと、本件建築物の間取の設計変更があり訴外人が変更報告書を提出し被告がこれを受理したこと、本件建築物敷地に隣接して原告所有の川崎市貝塚三九番の一の土地が存在し、原告は右土地上に家屋を所有して家族と共に右家屋に居住していることはいずれも当事者間に争いがなく、右建築物検査済証交付行為が被告の行政処分であることは前記一記載の認定のとおりである。
(二) そこで原告主張の本件処分の各瑕疵について判断する。
(1) 建築確認申請書添付図書の建築士法第二〇条違反について
同法第二〇条第一項には「一級建築士又は二級建築士は設計行為をした場合においてはその設計図書に一級建築士又は二級建築士たる表示をして記名及び捺印をしなければならない。設計図書の一部を変更した場合も同様とする。」と規定するがこの条項の目的とするところは同法第一条に規定するとおり建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めその業務の適正をはかり、もつて建築物の質の向上に寄与されることにあつて、同法には同条項に違背した場合の罰則並びに効力の消長に関する規定もないのであるから設計及びその図書の作成に当る建築士に対する業務執行の際に要する訓示的規定と解すべきであるし、「防火間壁(真壁裏返)」の記載が「防火間壁(両面ラスモルタル塗)」と訂正され、右訂正箇所の一に訂正印を欠くからといつて作成者たる建築士の記名捺印のある設計図書全部が適正を欠くとするのは相当でない。従つてかかる訂正印の一箇所の押捺を欠いた設計図書を添付した確認申請をも不適法無効と解するのは相当ではない。
(2) 同確認申請書添付図書の建築基準法施行規則第一条違反について
同規則第一条に縮尺、開口部の位置並びに延焼のおそれのある部分の外壁及び軒裏の構造を表示する二面以上の立面図、縮尺、床の高さ、各階の天井の高さ、軒及びひさしの出並びに軒の高さ及び建築物の高さを表示する二面以上の断面図を添付するように規定しているところ、成立に争いのない甲第一号証の一〇並びに被告本人尋問の結果によると、被告は川崎市においては断面が著しく相違する場合を除き一面の断面図で状況が確認出来、あるいは他の図面でも確知し得る場合は必ずしも二面の断面図及び立体図の添付を要しない取扱慣行としているので断面の差のない本件については一面の断面図で足りるものとしこれを受理したことが認められ、この処置が直ちに同規則の要求するところに悖るとも思われないから確認処分自体の無効をひき起す申請手続の瑕疵とはいい得ない。
(3) 前提行為たる建築物確認事項変更報告書受理手続の瑕疵に伴う検査済証交付行為の違法について
訴外人が被告あて提出した建築物確認事項変更報告書は前記一の(二)記載の認定のとおり間取りの設計変更にすぎずいわゆる構造上の大規模の模様替ではなかつたので確認事件の一部として処理され、前掲甲第一号証の一一、一三並びに成立に争いのない甲第一号証の一二によると、右変更報告書は訴外人の代理人たる建築設計者訴外山口勝好が作成提出し、添付図書(甲第一号証の一三)には捺印は欠けるが同山口勝好の二級建築士たる登録番号並びに記名の記載が、報告書には委任者たる訴外人の記名捺印が記載、押捺されてあり、同書面には同訴外人の適正な委任状が添付されているところ、設計者たる建築士の記名捺印は作成図書の正確性即ち業務の適正を期するためのものであることは前記認定のとおりであるから、これを全体として見るときは報告自体を無効たらしめる程に重大な瑕疵ある報告とはいえず、大規模の模様替に該当しない本件の如き場合に改めて確認申請をなすことなく、先行の確認事件の一部として取扱うことを違法とすべき特段の事情、理由もない。そして成立に争いのない第一号証の二並びに一四に、被告本人尋問の結果によると、本件建築物に関する工事完了届が被告に出されたのは昭和三二年二月一四日であり、被告はこの受理の日から一週間内に建築物及びその敷地が建築基準法並びにこれに基く命令及び条例の規定に適合しているかどうかの検査を行い、同年三月五日、同月一日付の検査済証を交付したことが認められ、被告に基準法の要求する工事完了届受理から検査までの間の期間徒過の懈怠は存しない。
従つて本件確認事項変更報告書に瑕疵があり、その受理手続の措置に違反があり、しかも検査施行を怠つたとしてこれに続いてなされた検査済証交付行為を違法とする原告の主張は理由がない。
(4) 神奈川県旅館業法施行条例第九条の二違反について
旅館業法並びに同法施行条例は、建築基準法とは別個の専ら旅客その他の保健衛生の観点から規定されているもので、これに違反する建築物施設では旅館業及びこれに準ずる営業が許されないのであつて、建築物の工事ないし旅館業以外の使用方法までを禁止しているものではない。従つて同法施行条例違反をもつて検査済証交付処分の前提となる重大な誤りとする原告の主張はそれ自体失当である。
(5) 建築基準法施行令第一一四条第二項違反について
被告本人尋問の結果によると本件建築物はその主要な間仕切壁はベニヤ板張ではなく防火構造を備えていると認められる。従つて同施行令違反とは認め難い。
(6) 建築基準法施行令第一二〇条違反について
そもそも同施行令第一二〇条にいう避難階とは直接地上に通ずる出入口のある階を指し、直接地上に通ずる階段を指すものではなく、同条によれば本件建築物の場合は歩行距離の問題はあるが二階から一階に通ずる階段が設置されれば足り二階から直接地上に通ずる階段は必要ではない。そして被告本人尋問の結果によれば二階から一階に通ずる屋内階段が設置されていると認められるからこの点に関する違反は認められない。
三、以上のとおり原告請求の各確認請求のうち、確認事項変更処分の無効確認の訴えはその対象たる行政処分の存在を欠くのでその余の点につき判断するまでもなく不適法として却下すべきであり、その余の処分の無効確認請求は、いずれもその無効確認を求める処分の前提となる手続の瑕疵が軽微で手続全体としてこれをみるときはその処分の無効までを惹起せしめ得ないものであつたり、瑕疵の原因として主張するところの法律違反が基準法とは直接関連性のないもの又は同法違反とはならないものばかりであるから、これを無効原因として確認処分並びに検査済証交付処分の無効を主張し各処分の無効確認を求めるのは失当であるから棄却すべきである。
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 溝口節夫 大久保敏雄 井野場明子)
(別紙)
原告
(請求の趣旨)
一、被告が昭和三一年八月一一日付川建第三五一一号をもつて、訴外国一摩に対してなした建築確認処分は無効であることを確認する。
二、被告が昭和三二年三月一日同訴外人に対してなした建築確認事項変更処分は無効であることを確認する。
三、被告が昭和三二年三月五日同訴外人に対してなした検査済証交付処分は無効であることを確認する。
四、訴訟費用は被告の負担とする。
(請求の原因)
一、訴外国一摩(以下訴外人という)は川崎市貝塚三九番地の二の土地上に木造二階建二四二・九三平方メートルの簡易宿泊所(以下本件建築物という)を建築するため昭和三一年七月二三日被告に対し建築確認を申請したところ被告は同年八月一一日付川建第三五一一号をもつて右申請を確認する行政処分をなした。
二、訴外人は本件建築物を昭和三一年一一月二五日建築(同年一二月二四日登記)し、昭和三二年一月二五日ころ被告に対し右建築の工事完了届を提出、被告はこれを同年二月一四日受付、同年三月一日付で同月五日訴外人に対し、本件建築物の検査済証を交付する行政処分をなした。なお、訴外人は同年三月一日本件建築物の間取構造の模様替に伴う設計変更に関する建築物確認事項変更報告書を被告に提出したところ、被告はこれを同日受理し、本件建築物の確認事項変更の行政処分をなした。
三、しかし、本件建築確認、確認事項変更、検査済証交付の各行政処分には重大かつ明白な瑕疵があるから無効である。
(一) 本件建築確認処分は記載事項に欠陥のある不完全な建築確認申請書に基づいてなされているから無効である。即ち右申請書添付の建築士作成の設計図書のうち二階平面図の部分に記載事項の一部を訂正した箇所があるが、このように訂正したときには建築士法第二〇条第一項により設計者が捺印をしなければならない義務があるにもかかわらず、右訂正箇所には捺印がなされていない。
次に、本件建築確認申請書には建築基準法施行規則第一条により、二面以上の立面図に延焼のおそれある部分の外壁及び軒裏の構造、二面以上の断面図に縮尺、床の高さ、各階の天井の高さ、軒及びひさしの出並びに軒の高さ及び建築物の高さを明示しなければならないのにもかかわらず、これが明示されていない。本件申請は右のように重大な欠陥があるから、これに対する本件建築確認処分は無効である。なお、本件建築物は建築基準法第六条第一項の一号又は三号に該当する。
(二) 訴外人は昭和三二年三月一日本件建築物の間取構造の模様替に伴う設計変更について建築物確認事項変更報告書を被告に提出したが、右模様替は本件建築物の構造上主要な壁、柱、斜材、床の一種以上についての大規模の模様替に該当する。建築主は構造上の大規模の模様替の場合には建築基準法第六条第五項によりあらためて確認申請書を提出して確認を受ける必要がある。しかるに、本件については単に変更報告書を提出したに過ぎなく、右法所定の確認を受けていないのであるから、被告が右変更報告書を受理し、本件建築物の確認事項変更処分をなしたことは建築基準法第六条第五項に違反し無効である。
しかして、被告は昭和三二年二月一四日訴外人から本件建築物の工事完了届を受理しながら、本件建築物の検査を怠り、その後同年三月一日右の違法な、かつ建築士の捺印のない無効な建築物確認事項変更報告書及び図書を受理し、違法な確認事項変更処分をなし、検査済証を交付する処分をなすに至つたものであり、右は建築基準法が要請している事前の建築確認と事後の完了検査の制度の趣旨を没却する無効な処分といえる。
(三) 本件建築物の構造は一階六畳二室、三畳一〇室、二畳一室その他、二階四・五畳一室、三畳一六室、二畳一室その他となつており、本件建築物は旅館業法の適用を受ける建築物である。ところで、神奈川県旅館業法施行条例第九条の二によると、客室の広さが最低四・五畳以上を有することを必要とするのであるが、本件建築物は右基準以下であるから、その工事完了後被告がなした検査済証交付処分は重大な誤りがあり、無効である。
(四) 本件建築物の主要な間仕切壁はベニヤ板張であり、建築基準法施行令第一一四条二で要求されている耐火防火構造を備えていないから、これを看過してなした本件検査済証交付処分は無効である。
(五) 本件建築確認申請書添付の設計図書には、本件建築物の二階に避難階を設ける旨図面が引かれ、これに対して本件確認処分がなされた。しかし、二階から直接地上に通ずる避難階を設置しなかつたのは構造(建築基準法施行令第一二〇条表(二)所定)違反であり、これを看過してなした本件検査済証交付処分は無効である。
四、原告は、本件建築物の敷地に隣接する川崎市貝塚三九番地の一の原告所有の土地(七一四平方メートル)上に家屋(七五・〇七平方メートル)を所有し、ここに原告を含め家族五人が居住している。
本件建築物については右のとおり建築確認、確認事項変更、検査済証交付の面に重大かつ明白な瑕疵があり、さらに耐火防火構造上法の定める最低基準に欠けている。ところで、本件建築物に出入りする多数の宿泊利用者は日夜火気を使用し、そのため原告は火災発生、延焼の不測の危難にさらされている。建築基準法は独り建築主の個人的利益のみではなく、近隣住民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資する目的から建築上構造、設備その他最低基準を定めて行政上規制を加うるものであり、本件確認その他の各処分は、右基準に適合するか否かを判断する行政処分であり、前記のとおり本件建築確認、確認事項変更、検査済証交付の各処分につき重大かつ明白な誤りがある以上、原告は本訴により右各処分の無効確認を求める法律上の利益がある。
五、よつて、本件建築確認、確認事項変更、検査済証交付の各処分につき、無効確認を求める。
(証拠省略)
被告
(本案前の申立)
一、本件訴を却下する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
(本案の申立)
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
一、認める。
二、検査済証を交付する処分が行政処分に該当することは否認。
間取の設計変更ということであり、間取構造の模様替には該当しない。確認事件の変更処分をしたことはなく、ただ報告書を受理したに過ぎない。
その余の事実は認める。
三、否認。
(一) 原告主張のように訂正箇所があつた点は認めるが、捺印もれはない。原告主張の二階平面図のうち防火間壁(真壁裏返)を防火間壁(両面ラスモルタル塗)と訂正した箇所が二箇所あり、その一箇所の訂正印によつて十分法の要請を充足していると解する。仮に、訂正印もれがあつたとしても、申請書自体が無効となることはない。
その余は否認する。
(二) 変更報告書の提出、受理、工事完了届の受理の点は認める。その余は否認。単なる間取の設計変更であり、大規模の模様替には該当しない。
(三) 本件建築物は一階六畳五室、四・五畳一室、三畳一室、二畳三室、二階六畳五室、四・五畳一室、三畳五室、二畳一室であるが、これが旅館業法所定の基準に該当するかどうかということは本件に何ら関係ないことである。
(四) 否認。ベニヤ板張ではない。
(五) 否認。本件建築物は建築基準法施行令第一二〇条表(二)に該当しない。
四、原告が本件建築物の隣地にその主張の家屋を所有し、家族とともに居住していることは認めるが、その余は否認。
(本案前の主張)
被告の訴外人に対する検査済証交付は、抗告訴訟の対象たる行政処分に該当しない。また、訴外人の建築物確認事項変更報告書の提出は、建築物に間取り設計の変更があつてなされたにすぎず間取構造の模様替には該当しなかつたので、被告は右報告書を受理したが確認事項変更処分をしたことはない。
さらに原告には当事者適格がない。即ち、本件確認処分並びに確認事項変更報告書の受理、検査済証交付はその申請者である訴外人に対してなされたものであり、原告は何ら利害関係を有しない第三者であり、本件は自己の法律上の利益に関係のない違法を理由としており、右の無効確認を求める法律上の利益を有しない。